(N)その作品“植物の灯り”が広まったという言い方がいいのか分かりませんが、色々な人の目に触れながら植物の灯りという事では、第一人者であると思うのですが30代の頃にはもう制作にかかってたんですか?
(K)いや全然。僕がこれを始めたのは、45、46歳の頃です。田舎暮らしをしてたけど、その時はこういう発想はしていなかった。ただ、山歩き、山遊びをしてたから、そうねぇ、自然の植物の凄さっていうのは、その時に知ったのかなぁ。何ていうのだろう。例えば春に山に入るとね、今、林業がけっこうさびれてて、山に入って森をちゃんときれいにしていないんだよね。だから野生がはびこってて、ツル性のものが山の入り口にあって。僕はそれを越えて行こうと思って、ツタのすだれみたいなものを自分でくぐって、顔を上げた途端に目の前に大木があって、それに野生のフジがからまってて、それがさ、ものすごくきれいで、結局もう人が山の中に入らないから見られていない、人に視感されていないというか、まぁ人に見られていようが同じかもしれないけど、人の目に触れていない自然の凄さ、きれいさ、まぁ獣達は見ているんだろうけど、そういうきれいさが目に焼きついてて、僕の中には記憶の中に刻みこまれてたと思うんだよね。だから、何か自然のすごさ、きれいさに東京に帰っても気がつくようなったし。
最初におこなった展覧会でもお客さんに「どこの山に住んでいるの?」「この葉っぱ、どこで拾うの?」って聞かれたけど「これキラー通りです」って。僕、ほら、青山で生まれて育ったから、あの辺りの街路樹って、結構きれいで。そんな事が面白くてね。人が驚いたり、そういう事が魅力で、結局今も作品を創っているのかなぁ。それに植物ってほら、この地球上では僕らよりずっと先輩っていうのかな、人間以前から生きているし、それだけ生き物としては大人だと思うし。だから僕たち人間は、休みになると自然の中に入って、癒されようと入って、それを拒否する事なく受け入れてくれる。そういう自然の凄さ、奥深さを感じてます。