(N)あの、その中で1年で100本、5年間で500本ぐらいのライブを、要は車を改造してそこで寝泊りしながらってことですよね?
(K)まぁ、改造じゃないですよ(笑)もうそのまんまで、ずっと車でツアーしてました。
(N)はは。その中で、『僕は自分の声を自分だけは信じてやりたい。』って。なんかすごくいいなぁと思って。その500本のライブの中で自分の声が太くなって、お客様に媚びないような声になって、みたいな感じで、変化していったんでしょうかね。
(K)そうですね。
(N)バンド時代はお客さんに、女の子に媚びているとか、分かんないですけれども、自分の声が、声質が変わっていくとか、そういうのが20代の頃にたくさんライブをやったから、声が変わっていって、誰にも媚びない声、骨太の声っていうのに、今…まぁ今はもう理想の形っていうか、そういうふうになっているんですかね?
(K)そういう意味で言うと、やっぱり歌ってこう…要するに結論から言うと、理想の声っていうのは、行けば行ったでまた先ができるから、辿り着くっていうことはあり得ないんですよね。しかも今度50代になってくると、例えば若い頃、一番高い音が出てた頃の音はもう出なくなってくるんですよね。でも、若い頃ストレートな感じで押していたのを、やっぱり歳いくともっとこう、わざと抑えてシリアスに伝えるとか。常に理想は先に進んでいくので、理想に到達するっていうことは多分最後までないんだと思いますね。
(N)ゴールっていうものはないけれども、道中の中で、色んなものの出会いの中で変わっていくだろうし…そういうことだろうと思うんですよね。
(K)そうですね。いろんな音楽と出合うじゃないですか。その、20歳の頃はもうこういうロックシンガーになりたいって思ってて。でもそこから何十年も経ってると、いろんなものを聴いて感動するし、いろんな大人っぽいシンガーなんかもたくさん知るようになってくると、「あぁ、やっぱりこういうふうな歌も歌えるようになりたいな」とかっていうふうに、いろんなことを思うことも、どんどんどんどん理想の中の要素の一つに加わってくるので。
(N)まだまだ、進歩の途中っていうか進化の途中っていうか、そんな感じですよね
(K)はい。ちょっとずつ自分のスタイルを、迷いながら、気が変わりながら、毎日続けていくような仕事なんじゃないのかなって思います。
(N)そこも職人という形で。
(K)そうですね、はい。